『中性子線育種×ゲノム編集』で、 植物・微生物に世界最速のスピードで欲しい進化を起こす。|ニュースリリース
2023.02.01『中性子線育種×ゲノム編集』で、
植物・微生物に世界最速のスピードで欲しい進化を起こす。
ハイブリットの品種改良技術で、カーボンニュートラル、気候変動に関わる社会課題解決のスピードアップを目指す。
株式会社クォンタムフラワーズ&フーズ(QFF)
株式会社クォンタムフラワーズ&フーズ(本社:茨城県水戸市、代表取締役:菊池伯夫、以下「QFF」)は、気候変動に関わる課題解決を目的とした、植物や微生物の育種技術において更なる迅速化を測るため、株式会社セツロテック(本社:徳島県徳島市、代表取締役:竹澤慎一郎、以下「セツロテック」)と業務提携協定を締結しました。『中性子線育種技術*1×ゲノム編集技術*2』により世界最速の品種改良サービスの提供を開始します。
■ 技術と業務提携の概要
QFFは、中性子線を利用することで従来の放射線育種の半分以下の期間で、植物等の新系統*6を創出できる「中性子線育種技術」(サービス名:スピーディ育種/特許技術)を2021年に世界で初めて実用化しました。高い突然変異*3誘発率を持つ中性子線は、品種改良において目的の形質*4及びそれを担う原因遺伝子を効率よく見つけることに長けており、他の放射線では難しかった倍数体や、微生物への照射も有効な利点があります。一方で、欲しい変異を狙って起こすことはできません。
セツロテックは、農業畜産分野における新品種開発を支援する研究開発受託サービス「PAGEs」を展開し、畜産動物から植物や微生物などの多様な生物種へとその開発対象を広げています。「ゲノム編集技術 ST8」(特許技術)により特定の遺伝子を狙い撃ちして自在に変異を導入できるため、短期間で精度の高い品種改良を実施できることが特長です。一方で、遺伝子とその機能が明らかでない対象には狙い撃ちできないため、別のアプローチで事前に標的遺伝子の探索を行う必要があります。
そこで、お互いの強みを生かし短期間で最大限の成果をあげるために、業務提携により両技術を連携させます。『中性子線育種×ゲノム編集』により、従来より短期間で目的の形質を持った新系統を作り出すことが可能となります。開発期間の短縮は、気候変動やカーボンニュートラル等の社会課題解決のスピードアップと開発の活性化に貢献し、必要とされながら未開拓である微生物分野の有用物質の開発を推進します。
■『中性子線育種×ゲノム編集』で実現できること
① 品種改良の更なる迅速化(=世界最速、最短1年※で新系統を創る)
気候変動は近年加速しており、栽培環境の悪化による農産物被害や原材料高騰が深刻化する現状において、品種改良により農作物等に気候変動耐性の付加や、生産性向上を測ることが喫緊の課題です。しかし交配育種をはじめ、変異剤*8およびガンマ線*9や重イオン線*10などを使った主流の品種改良技術は3〜20年の年月を要するため、気候変動のスピードに対応しきれないのが現状です。
これらの問題はやがて地球規模の食糧危機や食糧問題へと発展していくため、「品種改良の迅速化」は必須であり、私共は業種の垣根を超えて企業間で連携することにより技術力を高めこれを実現していきます。※一般的な植物の場合
② 微生物や昆虫の育種を活発化
微生物の育種はSDGs課題解決の鍵として近年注目されていますが、微生物は「培養物」として扱う必要があるため、ガンマ線や重イオン線等の放射線では育種が難しいことと、遺伝子が未解明なものが多いためゲノム編集の機会も限られ、開発が進みにくい課題がありました。
しかし、中性子線育種はその特長の1つとして培養物への照射も有効で、ランダム変異*5を強力に誘発できるため、今まで殆ど未知であった微生物や昆虫の遺伝資源を開発していくことが可能です。またゲノム編集のST8は微生物等の動物分野の育種において高い実績を持っています。これら両技術の連携により「中性子線育種で遺伝子を発見して、それをゲノム編集する」という画期的な育種アプローチが可能となり、難しいとされる微生物分野(微細藻類、酵母、乳酸菌、カビ等)の品種及び有用物質の開発に風穴をあけることが期待されます。
③ 先端技術のワンストップサービス
中性子線を含む放射線育種技術とゲノム編集技術はいわば競合関係にあり、両方をワンストップで利用できる例は今までありませんでした。しかし、これらの技術は前述の通り補完関係にあり成果をあげやすいため、連携することで相乗効果以上の大きなメリットが生まれます。地球の気候変動は近年加速しており、課題解決においては「スピード」が鍵となるため、ワンストップにより迅速、且つ精度の高い開発を行えることの意義は大きいと私共は考えています。
■ 今後の展望
今後QFFとセツロテックは、『中性子線育種×ゲノム編集』で植物、微生物、昆虫の育種により実績を積むことで、技術をさらにスピーディで精度が高く、汎用性の高いものへと洗練させていきます。また、99%が未知である微生物の遺伝子解明にも取り組み、有用な微生物などでその能力を最大限に引き出すための育種技術として『中性子線育種×ゲノム編集』の普及を目指します。共にディープテックカンパニーとして世界規模での課題解決に貢献するため、更なる技術の効率化に取り組み、海外を含め、気候変動や食糧の安定確保、カーボンニュートラル等のSDGs課題に取り組む誰もが活用できる技術にすることを目指していきます。
<用語解説>
*1 中性子線育種:「中性子線」とは放射線の一種であり、中性子が原子核を飛び出してひとつの方向に運動している状態の大きなエネルギーです。他の放射線より透過率が非常に高いことが特徴で、水分を含んだ培養物の中にある物質にまでエネルギーを及ぼすことができます。「中性子線育種」とは、この中性子線を種苗や培養物等に照射することによりDNAを壊し、その修復の過程で起こる「突然変異」を利用して新たな特徴を持つ植物等を生み出す品種改良技術です。中性子線による育種は他の放射線育種と比較して突然変異の誘発率が飛躍的に高いため、植物等の新系統を半分以下の期間で創出できます。放射線育種は1950年代頃より広く世界的に利用され、放射線等による突然変異育種の品種化実績は3000種以上にのぼります。
*2 ゲノム編集: 生物が持つゲノムDNA上の特定の塩基配列を狙って変化させる技術です。ハサミの役目をするツールで狙った塩基配列を切断し、その修復の過程で起こる配列変化を利用して生物の形質を変化させ、目的に合った新しい系統を作り出します。遺伝子組換え技術は、外来の遺伝子を細胞に導入して新しい形質を付け加えるものですが、ゲノム編集は生物がもともと持っている遺伝子配列を変化させることで、新しい形質を得ることが可能です。
*3 突然変異:遺伝物質に生じた質的・量的な変化のことで、生物(細胞)やウイルスの核やミトコンドリア、葉緑体のDNAやRNAが、質的・量的に変化することを指します。「進化」の原動力になるものです。
*4 形質: 動物や植物など、生物のもつ性質や特徴のことです。色や形、味などの見た目の特徴だけでなく、耐病性、耐候性、生産性、自家不和合性、低温開花性等、様々な形質を求めて品種改良を行います。
*5 ランダム変異:ゲノム編集のようにDNA塩基配列の特定の遺伝子を狙ってノックアウトするのではなく、ランダムにノックアウトし誘発された突然変異のことです。
*6 新系統:植物等の品種改良において、今までにない新しい形質を持ったものが「新系統」であり、それらが検定、選抜され、有用な形質を持つ集団として各種の評価に合格し何らかの公的な認定を得ると「新品種」となります。
*7 CRISPR/Casシステム: DNAの二本鎖を切断してゲノム配列の任意の場所を削除、置換、挿入することができる新しい遺伝子改変技術です。
*8 変異剤:エチルメタンスルホン酸(EMS)などの化学薬剤のことで、変異剤で植物を薬品処理することで突然変異を誘発して品種改良を行います。
*9 ガンマ線:放射線の一種であり、波長が短い電磁波で、放射性物質の原子核からアルファ線やベータ線が飛び出した後、原子核に残されたエネルギーが放出されたものです。植物に照射することで突然変異を誘発して品種改良を行います。
*10 重イオン線:重イオンビームとも呼ばれ、放射線の一種です。炭素、窒素、ネオンなどのイオンの粒子を植物に照射することで突然変異を誘発して品種改良を行います。1987年から研究開発が始まった日本産の技術です。
◆株式会社セツロテックの概要
- 商号:株式会社セツロテック
- 代表者:代表取締役 竹澤 慎一郎
- 所在地:徳島県徳島市蔵本町3丁目18番地の15 藤井節郎記念医科学センター
- 設立:2017年2月22日
- 主な事業の内容:ゲノム編集による研究支援サービスならびに新品種の事業化
- URL:https://pages.setsurotech.com/
◆株式会社クォンタムフラワーズ&フーズ(QFF)の概要
- 商号:株式会社クォンタムフラワーズ&フーズ
- 代表者:代表取締役 菊池 伯夫
- 所在地:茨城県⽔⼾市⼤町3丁⽬4−36 ⼤町ビル
- 設立:2018年7月
- 主な事業の内容:量子農業・バイオ技術の開発、供与、知財管理
- URL:https://qff.jp/
◆本件に関するお問い合わせ先
株式会社クォンタムフラワーズ&フーズ(QFF) 担当:宇留野
e-mail: info@qff.jp
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