Loading...

技術・サービス

中性子線育種技術

農作物の高温障害、病害虫被害、生育不良、着色不良、変色、腐敗、日焼け、尻腐れ …

従来の「品種」が、従来の農地で安定して作れなくなっている。

品種改良に、もっとスピードを。

自然界の植物は宇宙から微量の放射線を浴びることでゆっくりと「進化(突然変異)」しながら「地球環境の変化」に適応していきます。農作物もまた地球環境の変化に合わせ、自然界での突然変異(進化)と品種間の交配によって長い年月をかけて「進化=改良」が重ねられてきました。
しかし、近年の「急速な」気候変動で栽培環境が悪化し、農作物が高温や病害虫をはじめとした深刻な被害を受けています。このことは、収量や品質の低下による経済的損失だけでなく、農業・酪農資材の高騰や、農家の減少、特産物の消滅、原材料高騰、物価の上昇、食の自給率低下、食糧問題など地球規模の様々な課題に波及しています。

気候変動への対策として、農作物を新たな環境に適合させるための品種改良ニーズは高まる一方です。しかし、品種改良とは原理上ゆっくりしたものであるため、急速な環境変化には対応しきれない現状があります。
これらの課題を解決するためQFFは新系統を創りだすまでの期間が「従来の約半分」となるる中性子線育種技術を開発しました。従来より飛躍的に高効率に品種改良を行える新技術です。

最短1年※1で新系統を創り出せる「中性子線育種」技術

中性子線育種は植物に自然に起きる「突然変異」を利用した品種改良技術で、放射線の一種である量子線(中性子線)を使います。ガンマ線や重イオン線など従来の放射線育種では新系統を作り出すのに3〜5年以上かかりますが、突然変異率が3〜26%と非常に高い中性子線は確率論で必ず一定の効果が出るため、従来の約半分1〜3年で新系統を創出できます。特に植物(花や野菜、穀物など)では最短1年、微生物では最短1週間※2で新たな系統を作り出すことができます。

突然変異率:1-39%※3 → 新系統創出:1-3years
  • ※1 花や野菜、穀物などの植物の場合、 最短1年で新系統を作り出せます。従来技術では3〜5年以上かかります。 ※2 ラボレベル ※3 小菊の成長点への照射による実績値。

突然変異率は従来技術の15~300倍

中性子線育種で使用する速中性子線は高LET線で、大きなエネルギーで植物のDNAの二本鎖を複数個所切断するため、1回の照射で「大きな突然変異」を「高効率」で得やすい特長があります。イネ(日本晴)、シロイヌナズナの場合の突然変異率は第二世代の実績値で3〜26%。これは、現在主流のEMS(化学変異剤)、ガンマ線や重イオン線(放射線)による突然変異率の15〜300倍です。
この高い変異率により新系統を作り出すまでの期間を大幅に短縮できることから、中性子線による育種はガンマ線や重イオン線に代わる次世代技術として今後の活用が期待されます。さらに、速中性子線は従来の放射線とは引き起こすDNA損傷の種類が異なり、働く修復系も異なることから、これまで獲得できなかった未知の変異体の取得が期待できます。

中性子線育種の突然変異率

  • 小菊

    成長点への照射による実績値
    変異体の写真

    139%

  • イネ(日本晴)、 シロイヌナズナ

    第二世代の実績値

    326%

※さらに高い線量照射で変異率を向上できます。

  • 世界初の社会実装

    中性子線育種は海外に研究実績としてはありますが、実現可能な高度科学施設が日本を含め世界に数ヶ所しかないため非常に利用ハードルが高く、実績がありませんでした。
    QFFはそこに目をつけ、国内の科学者を中心にアライアンスネットワークを組み、日本初の中性子線育種技術の実用化に成功しました。さらに、スピーディ育種サービスとして世界初の「社会実装」を実現しました。
    QFFアライアンスネットワーク

  • 特許技術

    QFFでは種子などに中性子線を照射し突然変異を誘発する「中性子線育種技術」と、それに使用する「中性子線照射装置」を開発し、この2件の特許を取得しております。アメリカとヨーロッパにて国際特許も出願中です。

  • 汎用性

    透過性の高い中性子線は汎用性が高く、殆どの植物はもちろん微生物や昆虫への利用も可能です。

  • 中性子線照射実積

    植物 ※種子、成長点、穂木、苗木、OC細胞、カルスなどへの照射

    朝顔 / 菊 / 小菊 / ストック / トルコギキョウ / カーネーション / 米(日本晴、ササニシキ) / 大豆 / シロイヌナズナ / マイクロトム / トマト / ごぼう / 梨 / 人参 / キャベツ / ダイコン / ブロッコリー / レタス / サツマイモ / イチゴ / カモミール / 玉ねぎ / ネギ / 胞子 / 大葉 / ほうれん草 / セロリ / 小松菜 など

    微生物 ※培養物への照射

    微細藻類 / 酵母 / 大腸菌 / 乳酸菌 など
    ※原核生物、真核生物、古細菌などへの照射も可能です。

    中性子線育種(スピーディ育種)による品種改良の例
  • 培養物・微生物への照射

    電荷を持たない中性子線は「透過性」が高く、核反応することが特長です。そのため電荷を持ち、物質透過性が低い重イオン線では難しかった、水分を含んだ「培養物中の対象」にも照射によるエネルギーを一様に及ぼすことができます。
    さらに中性子線はX線やγ線等の従来の放射線と比べて「ランダム変異※4」誘発能力が非常に高いため、遺伝子が殆ど未解明な微生物の育種において有用形質を得やすい利点があります。
    ※4 ランダム変異:ゲノム編集のようにDNA塩基配列の特定の遺伝子を狙ってノックアウトするのではなく、ランダムにノックアウトし誘発された突然変異のこと。

  • 安全性

    中性子線はいわゆる放射線にあたり、中性子線育種とは放射線育種(放射線を使った品種改良)の一種です。放射線育種は植物の進化の過程で自然と起きる「突然変異」を利用するため、安全なものとして1960年頃より世界中で長く活用されてきた実績があります。中性子線による品種改良としてはアメリカで1960年代に開発された、赤くて甘いグレープフルーツ「スタールビー」が日本でもよく売られています。
    放射線等による突然変異育種による品種登録数:世界中で約3248

私たちの 生命 を作る‘食’のほぼ100%が、実は品種改良されたもの

※https://katosei.jsbba.or.jp/view_html.php?aid=886

研究開発体制・拠点 QFFのオープンイノベーション

QFFは主に、東北大学(下記)、茨城大学(下記)、筑波大学、高エネルギー加速器研究機構(KEK)と中性子線を用いた共同研究を行っています。さらに、QFFの先導により、国内の科学者および大学、研究機関、科学施設等でアライアンスネットワークを結成し「オープンイノベーション」の形で日本初の中性子線技術の実現を果たし、現在も積極的に中性子線を用いた植物や農作物の研究を行っています。
強力なパートナー

  • 東⾕ 篤志 教授、⽇出間 純 准教授、寺⻄ 美佳 助教
    東北⼤学 ⽣命科学研究科 分⼦遺伝⽣理グループ

    多様な環境要因が、⽣物の遺伝情報である核・ミトコンドリア・葉緑体のゲノムDNAの維持、修復と変異、次世代への継承に対して及ぼす影響の研究において優れた実績を有する。様々な⽣物を⽤いて、実験室内の顕微鏡下から、⽇本各地の野外環境、さらには宇宙ステーションまでを利⽤し、ゲノム情報を包括的に活⽤しながら、分⼦・細胞・個体レベルでの統合的な解析を⾏っている、修⼠課程以上総勢27名の世界的な研究グループ。

  • 久保⼭ 勉 教授
    茨城⼤学 農学部 地域総合農学科

    イネやアサガオを中⼼とした、植物の⽣殖隔離機構に関わる分⼦遺伝学的な研究やDNAマーカーの開発において優れた実績。植物育種、⽣殖隔離、DNAマーカー、雑種弱性、ガンマ線育種などの幅広い経験と知識を有する、QFFの放射線育種分野の総合的なアドバイザー。キクのキメラの分離技術のエキスパートでもあり、キクの開発でも協⼒。

  • ゲノム編集の第一人者 江面 浩 教授
    筑波大学

    専門分野 : 遺伝育種科学、園芸科学、応用分子細胞生物学
    “世界初のゲノム編集トマト”を市場投入。

スピーディ育種サービス

世界初の中性子線育種サービス “スピーディ育種”

近年、気候変動対策として農産物の品種改良ニーズは高まる一方です。また、代替食料や代替燃料の開発、カーボンニュートラル・ネガティブ、有用物質の生産、スマートセル開発等、地球環境課題への取り組みが活発化し、微細藻類、酵母、乳酸菌、カビ等の微生物やコオロギなど昆虫の品種改良ニーズも急速に高まってきています。

そこでQFFは今まで実質、国や研究機関、種苗会社でしか行えなかった放射線による品種改良を様々な企業様にご活用いただけるよう、商用の中性子線育種サービスとして世界初の“スピーディ育種”を2021年に開始しました。
スピーディ育種は放射線の中でも突然変異率の高い「中性子線」を使うため、求める形質を得るまでの期間を大幅に短縮できることから、従来の放射線より「短期間且つ低コスト」で品種改良を行えることが特長です。また、更に品種改良のスピーディ化と効率化を測るため、ゲノム編集やEMS(化学変異剤)処理を組み合わせることも可能です。多様な課題に対応した共同研究開発も積極的に行っています。
品種改良技術の比較表(開発効率・開発期間・コスト等)

例えば、こんな場合にスピーディ育種をご検討ください。

スピーディ育種 品種開発フロー

スピーディ育種による品種開発は下記の流れで行います。現在はstage1の照射サービスまでを中心に行っておりますが、2024年より正式に全てのサービスを開始予定です。

スピーディ育種 サービスメニュー

スピーディ育種には「中性子線照射サービス(A)」をはじめ、中性子線照射後の変異体の選抜や育種、新品種の開発・種苗登録までを一貫してご提供する「品種開発トータルサービス(C)」もございます。ゲノム編集やEMS(化学変異剤)処理を中性子線育種に組み合わせることで、更にスピーディ且つ効率的な開発を行うことも可能です。また、「共同研究開発サービス(D)」として、共同開発や商品開発支援、ゲノム編集等の最先端バイオテクノロジー技術との共同研究も実施しております。常に最適な方法をお客様と一緒にご検討させていただきます。
開発対象は農作物や植物をはじめ、近年急速に需要の高まっている微生物や昆虫の育種も可能です。またAIを用いたデータサイエンス技術との組み合わせ等も含めて、QFFでは中性子線利用の様々な可能性を視野に入れています。メニューにないものでもお気軽にご相談ください。

コストについて

スピーディ育種は1回の照射による突然変異率が従来技術と比較して15〜300倍と高く、効率的です。また、突然変異率の高さにより照射および選抜回数が減り開発期間も短くなることから、開発にかかるトータルコストも従来より下がります。トライアル照射サービスもご用意しておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

A 中性子線照射
サービス
種子・微生物・その他の対象物への照射
セルと照射区のイメージ 5照射区×各2セル=10セル  の場合

標準種子の場合は円筒形のアルミ缶「セル」に入れて照射※1を行うため、「照射区」ごと、セル単位を基本に料金が決まってきます。植物の成長点、穂木、微生物等の培養物等、セルに入らない対象物の場合は、エッペンチューブに微生物溶液を封入し照射したり、培養物を封入したシャーレに照射したり、条件によりカスタマイズして照射を行います。
すべての対象物においてオーダーメイドでの照射となるため、照射にかかる費用は対象物の大きさや状態、目的等の諸条件により異なりますので、詳しくはお問合せください。

様々なお客様にご利用いただけるよう、初めてのお客様限定のトライアル照射サービス※2や、費用を抑えた成果公開型のアカデミック限定照射パックもご用意しております。また、すべての照射サービスに、突然変異が起きなかった場合の返金保証※3が付きます。

※1 すべての照射サービスに事前の照射計画と、目的形質獲得時の成功報酬型ライセンス契約が必要となります。 ※2 初めての照射サービスご利用時に限りご選択いただけます。放射線量に制限があります。 ※3 万が一、M2(第二世代)で有用・不要を問わず何の変異も起きなかった場合は、料金の3割程度をご返金致します。

B 中性子線照射
+スクリーニング
サービス

ご相談ください。

C 品種開発トータル
サービス

ご相談ください。

D 共同研究開発
サービス

ご相談ください。

サービスの流れ

Aの中性子線照射サービスの場合

– JAPAN’S GAME CHANGING
QUANTUM TECHNOLOGY –

新たな
農業ビジネスモデルの
創生へ

お電話でのお問い合わせ

050-7103-6063
(平⽇09:00〜17:00)